ファン小説な話。 その1【負け犬の奇妙な冒険 第五部・黄金の風】
みなさま、こんにちは。
最近、『落ちこぼれ戦記』二周目に突入したヒダマルです。ガチです。
ヒダマルが負け犬(id:AKI1200)さんの大ファンであること、このブログ内で公言したことはあったかな? あったよな。
あ、あの時以来か。
あとホラ、『負け犬プロジェクト』も進めてますし。
そもそもヒダマルがお絵描きの練習始めたのって、負け犬さんをかわいく描くためですからね。
そして……、
上段の【ナヤメル、ヒダマル】でもちょっぴり言及しておりますが、今回はヒダマル初の試み……、
負け犬さんのファン小説を書いてみました!
描くのは大変だけど、書くのは得意分野ですからね。ヒダマルがんばっちゃった。
小説部分の文字数は約4,500字、文庫本にみっちり詰め込んだとして見開き3ページ分です。空白や改行も入れると、見開き10ページ超分くらいかな?
まぁ横書きですからね。
空白が多くなるので、その分だけ増幅されています。
免責事項。
登場人物はもちろん、『落ちこぼれ戦記』さまに登場する女の子たち。
負け犬さん、巫女ちゃん、お嬢、白衣ちゃん、姉ちゃん(と、勝ち猫ちゃん)です。
ファン小説を書くにあたっては、各キャラクターの特徴をなるべく忠実にトレースして、言いそうなこと・やりそうなことを再現するように心がけております。
おります、が……。
当然のことながら、ヒダマルは原作者ではないので、完璧なものには成り得ません。
彼女たちのイメージを壊してしまうことのないよう細心の注意を払ってはいるものの、違和感を覚える可能性はどうしても残ります……。
その時は、ごめんなさい。
先に謝っておきます。
それと、もうひとつ。
タイトルから分かる通り、この小説は『ジョジョの奇妙な冒険 第五部・黄金の風』のパロディです。
『落ちこぼれ戦記』×『ジョジョ』のコラボ小説という一面もあるのです。
そのため、ジョジョ知識がない方には、状況がよく分からないかもしれません……。これもごめんなさい。
ただ、ジョジョを知らない方でも、『落ちこぼれ戦記』の読者様なら十分に楽しんでいただけるかと思います。
そして、『落ちこぼれ戦記』も『黄金の風』も両方好きな方には、かなり刺さると予想します。
あ、『落ちこぼれ戦記』をご存知ない方もいらっしゃるかな。
そういった方は、下のリンクで予習されるも良し、小説を先に読んでカオスを楽しむも良し、お好きな方をば。
のっけから注釈ばっかで申し訳ないですが、イタリアの歴史の如き深い心で読んでいただければ幸いでございます。
では、どうぞ。
『負け犬の奇妙な冒険 第五部・黄金の風』
その①
明け方。
徐々に白く、蒼く染まって行く空と海に挟まれて、世界遺産の街が広がっている。
「トリッシュを連れ帰ったのはたった今! 俺が「人生」に「落ちこぼれた」からだッ!」
街の名は「ヴェネチア」。
その一画、たったひとつの教会のみを有する「サン・ジョルジョ・マジョーレ島」に、エンジン付きのボートが停められていた。
ボートの船尾には、黒髪に猫耳を備えた少女が横たわっている。……気絶している。
そんな彼女を守るように、凛と立つのは犬耳美少女。
明けゆく天頂と同じ色の長髪をなびかせ、決意を込めた視線と言葉を岸へと投げかけている。
かつての仲間たちへ。
四人の女性に向けて。
「お前たちとはここで別れるッ! これからお前たちが俺と一緒に行動すればッ! お前たちも俺と同じ「落ちこぼれ」になってしまうからだ!」
波の音だけが静かに響く世界で、風に犬耳を揺らす美少女。
人生に迫る試練、その荒波を乗り越える覚悟を秘めた瞳で、
「「助け」が必要だ……。ともに来る者がいるのなら……、この階段を降りボートに乗ってくれ」
と、眠る少女と自身が乗る小舟を指し示した。
信頼していたリーダーによる突然の落ちこぼれ宣言。
衝撃的な宣告を受け、重大な選択を迫られた仲間たちは、
「いやちょっと待ちなさい」
「事態が飲み込めませんわ」
「勝手に進めてんじゃねぇド腐れLoser……ですぅ」
「う~んと、状況がよく分からないなぁ……」
異口同音に戸惑っていた。
その②
四人の中から代表するように、一人の女性が歩み出た。
イタリアの地にそぐわない、巫女服をまとった女性である。そう、巫女ちゃんである。
腰に手を当て、数段下のボートを物理的にも心理的にも見降ろしている。
「負け犬、いくつか質問があるんだけど」
「どうしたアバッキオ?」
「誰がアバッキオよ。……この状況はなんなの? いきなりヴェネチアなんて。あんた、確かお隣の国にすら旅行したことなかったでしょ?」
「そうだねぇ。俺のような落ちこぼれには海外なんて縁がないよ」
「で?」
「うん。実はこの間、『落ちこぼれ戦記』の読者さんであるヒダマルさんからね、「ファン小説を書いて発表してもいいですか?」っていうコメントをいただいたんだ」
「奇特な読者様もいたものよね」
「でね、「ファン小説に出演して、この場所でみんなが台本通りに演技してくれるなら、ロハでイタリア旅行に連れてってあげる」っていうことだったから」
「だったから?」
「3つ返事でOKしちゃった☆」
「また考えなしの行動って訳ね……」
「私たちを巻き込まないでほしいですわ」
「そんなに……簡単に……操られるから……お前は……落ちこぼれるん……ですぅ」
「台本通りに演技かぁ……。自信ないけど、ちょっと楽しそうだね」
こうした事態に慣れている様子の巫女ちゃん、お嬢、白衣ちゃん、姉ちゃんが、呆れた口調で感想を述べた。
「しかも、あんたが『ジョジョの奇妙な冒険』の話をしてるのって聞いたことないけど? 実は好きだったの?」
「いや、予備知識は一切ないよ。「ジョジョ? 何それ美味しいの?」って感じ」
「よくそれで引き受けましたわね……」
その③
「という訳で、みんなにも台本配るよー。はい巫女ちゃん……、お嬢……、白衣ちゃん……、姉ちゃん……」
早朝のヴェネチアで、安っぽい半紙を綴じた台本を配る負け犬。
表紙には『負け犬の奇妙な冒険 第五部・黄金の風』の文字と共に、ほにゃけた顔の眼鏡が印刷されている。
飲み込みの早い巫女ちゃんがパラパラとめくりながら、
「ヒダマルさんの説明によると……、このシーンは「所属していた悪の組織を独断で裏切ったリーダーが、部下達にも進退を迫る」という、割とシリアスな場面らしいわね。シリーズ中でもけっこう有名で、人気のある回みたいよ」
「ろくでもないリーダーですわ……」
「俺は「正しい」と思ったからやったんだ。後悔はない……。こんな世界とはいえ俺は自分の『信じられる道』を歩いていたい!」
「急にカッコイイ台詞だけ取り出してドヤ顔してんじゃないわよ」
「お前のような……Loserが……何を言っても……一切響いてこない……ですぅ」
「ホラ、巫女ちゃんはアバッキオ役だから、早くそこの繋留用ボラードに座って」
「繋留用ボラードってなによ……? ああ、港によくある、船をつないでおくやつのことね……」
「負け犬さん物知りだねぇ」
「どうでもいい知識量だけは引けを取りませんわね」
「ところで、台本には「10月よりアニメ放送開始イィィィッ!」って書いてあるよ? まだ7月だけど、どうしてこのタイミングでファン小説をやるのかな?」
「それは……おそらく……ですぅ」
「ええ。間違いないわね」
「なんですの?」
「「今回は気絶してるだけのトリッシュ役・勝ち猫のキャラが確定する前にやっちゃおう」って魂胆でしょうね。キャラ確定してからだと、「ただ眠ってる役の見せ場が無いから困る」と考えたんでしょう」
「しかも、そもそもメンバーが足りないからって主人公役が不在ですの!?」
「浅はか……ですぅ。その……ヒダマルって……奴の……底が知れる……ですぅ」
「こ~ら。読者さんのことそんな風に言っちゃダメだよ?」
「それにしても、アバッキオのメタ発言も板についてきたねぇ」
「誰がアバッキオよ」
その④
ゆっくりと、しかし確実に登る太陽が、彼女たちに伝えている。
もはや時間に猶予はなく、人生の大きな選択が目の前に迫っている事実を。
そう、選ばなければいけない。
信頼していたリーダーを、しかし組織を裏切ってしまったリーダーとの絆を、ここで絶ち切るのか。
それとも……、茨の道を共に歩むのか。
「言ってる……ことは……よく……分かったし……正しい……ですぅ。ブチャラティ……ですぅ」
巫女ちゃんは疲れたように座り込み、お嬢は顔を背け、姉ちゃんは台本を熟読している。誰もがボートに背を向けている。
沈黙に覆われたヴェネチアの空気を震わせているのは、白衣ちゃんだった。
「だけど……はっきり……言わせてもらう……ですぅ。残念だけど……ボートに……乗る者は……いない……ですぅ」
そう伝えると、すっ、とボートへの階段を一歩後ろに下がって見せる。
それは「お前に付いて行く者はいない」という意思表示……、と同時に、「考え直してほしい」というメッセージでもあるのだった。
仲間の行動を見て、
(おおぉ……。白衣ちゃんが真面目に演技してくれてる……!? 無表情な棒読みには狂気を感じざるを得ないけど……!)
余計な所に感動を覚える負け犬。
(ただ、ひとつだけ難があるとするならば……!)
「「情」に……流され……血迷った……ことを……するなんて……ですぅ。あんたに……恩は……あるが……ですぅ。付いて……行く……こととは……別だ……ですぅ。あんたは……現実を……見て……いない……ですぅ。理想だけで……この世界を……生き抜く……者は……いない……ですぅ。この組織……なくして……私たちは……、
(長い……!)
(長いわね……!)
(長いですわ……!)
(がんばって、白衣ちゃん……!)
その⑤
「ええ、フーゴの言う通りよブチャラティ」
白衣ちゃんの長い独白が終わると、繋留用ボラードに腰を下ろしていた巫女ちゃんが後を引き継いだ。
「あんたがやったことは自殺に等しいこと。世界中どこに逃げようと、もうあんたに「安息」の場所はない……」
震える身体を抱きながら、諦観したような口調で断言する。
続けて、ボートに立つ負け犬へ更に力強い視線を向け、
「そして、私が忠誠を誓ったのは「組織」によ。あんたに対し忠誠を誓った訳じゃないわ!」
と、刺すような言葉を投げつけた。
仲間の意志を受け止め、悔しそうに目を伏せる負け犬。
このまま、誰もボートへ乗り込むことなく袂を分かつかに思えた、
その時。
「……けれど、」
巫女ちゃんは急に立ち上り、
「私ももともと、行く所や居場所なんてどこにもなかった女よ……。この国のちゃ会からはじき出されてね……! 私の落ち着ける所は、負け犬……、
あ、あんたと一緒の時だけよ……!」
そう言いながら、一切の躊躇いがない動きで階段を降りると、そそくさとボートに乗り込んで腰を下ろした。
腕を組み、水平線へ顔を向けている。
耳が真っ赤である。
(((( 噛んだ……!! ))))
心をひとつにする負け犬ガールズ。
(大事な所で噛んじゃったよ巫女ちゃん……!!)
(「この国のちゃ会」ってどういうことですの!? けれど、指摘しようものなら確実に血を見ますわね……!!)
(分かってるな……愚民ども……ですぅ。ここは……華麗に……スルーして……平穏を……守る……ですぅ)
瞬時のアイコンタクトにより危機回避を図る負け犬ガールズ。
(しかも負け犬さんのこと役名の「ブチャラティ」じゃなくって、ちゃんと「負け犬」って呼んじゃった……!! 巫女ちゃん可愛い~……!!)
(え、噛んだことに対して赤くなってるの!? それとも思いがけず俺にデレちゃったことに!?)
(余計な……詮索を……するな……Loser……ですぅ)
その⑥
「ボスを倒したのならよぉーーーーッ、ですわ!!」
微妙な空気を打ち破るべく、元気な声を出すお嬢。
「人気から言って、次の幹部は私ですわね!?」
能天気なことを言いつつ、何も考えていないそぶりで、あっけなくボートへ乗り込んだ。
パンフを開き、美味しい朝食が食べられる店を探している。もう今後のヴェネチア観光のことで頭がいっぱいのようである。
「お前ら……どうか……しているぞ……ですぅ。完全に……孤立……するんだぞ……ですぅ」
巫女ちゃんが作り出した地雷を過去の物とすべく、話を進める構えの白衣ちゃん。
続いて、やっと出番が回って来た姉へ目配せする。
「わ、私はどうしようかなぁ? え~っと、ねぇブチャラティ。私、どうすればいい? 行った方が良いと思う?」
「姉ちゃんには是非、一緒に来てほしいな!」
「あれ!?」
「台本にないことを脊椎反射的に口走ってんじゃねぇパブロフのLoserが……ですぅ」
負け犬のアドリブに展開を失念し、台本を取り出す姉ちゃん。
その時、一陣の風が吹いて、彼女の手から冊子を奪い去っていった。
ヴェネチアの空に、にやついた眼鏡男のイラストが舞う。
「ああっ、ヒダマルさんからの指令書がっ!? 回収しないとっ!」
負け犬は慌ててボートを降り、あたふたと島に上陸すると、風に煽られる台本を追いかけていく。
「あ、ごめんねっ」
負け犬に続こうとする姉を、
「姉……早く来る……ですぅ。今のうち……ですぅ」
白衣ちゃんの声と、ボートのエンジン音が呼び止めた。
その⑦
「巫女さん、ヴェネチアって何が美味しいんですの?」
「ピザはダメだけど、『イカスミ』のパスタとか『毛ガニのサラダ』、『チプヤーニホテルのカルパッチョ』なんて生肉料理は絶品らしいわ」
「サンマルゲリータ……広場で……ペスト医師の……仮面を……買いたい……ですぅ」
「私はヴェネツィアングラスを見てみたいなぁ」
今後の予定を姦しく相談する四人と、
「巫女ちゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」
「行くよッ! 俺も行くッ! 行くんだよおおおおぉぉぉぉぉーーーーッ!!」
叫びつつ、涙ながらのクロールでボートを追いかける負け犬。
「姉、そろそろ勝ち猫を起こしてくれる?」
「うん。お~い勝ち猫ちゃん?」
「もう起きて大丈夫ですわよ!」
「一緒に行くってばッ!! 俺もヴェネチア観光に行くんだよおおぉぉぉーーーーッ!!」
「だから待ってええぇぇぇぇーーーーッ!?」
仲間に追い縋ろうと必死に水をかく負け犬、その魂の遠吠えが響く早朝のヴェネチアに、
「Loser……アリーヴェデルチ(さよならだ)……ですぅ」
哀しい別れの言葉が混ざり、ボートのエンジン音と共に遥かな空へと広がっていく……。
あとがき。
以上、『負け犬の奇妙な冒険 第五部・黄金の風』でした。
ジョジョを知らない方にはよく分からなかったかもしれませんが、刺さる人にはざくざく刺さるはずです。
ヒダマルがそうだもの。
負け犬さんはブチャラティ役、巫女ちゃんはアバッキオ役、勝ち猫ちゃんはトリッシュ役であると明言していますが、他の三人が誰の役を担当しているか当ててみるのも一興かと存じます。
あ、でも、主人公のジョルノはいません。
配役的にも人数的にも、これが自然な形かなぁって……。
では、お別れのご挨拶と逝きますか。
「ということで今回はここまで」
「それではまた次回(^o^)/」
「次はどこに行けるんですのっ?」
「どこに行こうが……LoserとNEETの……コラボだと……ロクな目に……遭いそうに……ない……ですぅ」
「白衣ちゃん、せっかく小説書いてもらってるんだから、そんなこと言っちゃダメだってば」
「メッ!」
負け犬さん、ありがとうございました!!